【最強のわかりやすさ】皮相電力とは?計算方法をわかりすく解説

家電や機械を使用する際は定格の電圧、容量を把握する必要があります。

機器の容量を把握せずに使用すると「せっかく購入したものが動かない」、「故障してしまった」という事態に陥る可能性があります。

そんな時に活躍するのが皮相電力と呼ばれるものです。

今回は皮相電力とは何なのか?どのように計算するのか?という部分を解説していきます。

いずみ

この記事を読むと、皮相電力の概要と計算方法について理解できます。




交流電力の基本について


皮相電力を知る前に、まずは交流電力がどのようなものか知る必要があります。

交流電力は大きさ、向きが常に変化していることから瞬時電力の平均値(平均電力)を交流電力としています。

交流電力の基本的な計算方法は下記の式になります。

$$P=VI\cos{φ} [W]$$

直流電力と同じく電圧×電流=電力で計算するのですが、交流の場合は位相の関係を考慮する必要があります。

なぜ、このような式になるのか順を追って説明します。

例えば、下の図のような抵抗とコイルが接続された交流回路があったとします。

回路にはv=√2Vsinωt[V]の電圧があるため、電流i=√2Isinωt[A]が流れることになりますが、コイルを流れる時に電流の位相は遅れます。

この時の遅れた位相をφとすると、回路に流れる電流iはi=√2Isin(ωt-φ)[A]となります。

先程も話しましたが、交流電力は大きさが常に変化していることから、瞬時電力を平均したものを交流電力として扱っています。

そのため、まずは瞬時電力を計算してみると、下のようになります。

$$p=vi=\sqrt{2}V\sin{ωt}×\sqrt{2}I\sin{ωt-φ}$$

$$=2VI\sin{ωt}\sin{ωt-φ} [W]$$

ここで、sinAsinB=1/2{cos(A-B)+cos(A+B)}の式を使うと、さらに下の式のように変形できます。

$$p=2VI\sin{ωt}\sin{ωt-φ}$$

$$=2VI×\frac{1}{2}{\cos{(ωt-ωt+φ)}+\cos{(ωt+ωt-φ)}}$$

$$=VI\cos{φ}+VI\cos{(2ωt-φ)} [W]$$

これが瞬時電力の式となるため、この式の時間経過による平均値を考えると交流電力を求められることになります。

VIcosφ+VIcos(2ωt-φ)の平均ですが、式のVIcos(2ωt-φ)の部分については時間経過とともに周期的にコサインカーブを描くことになるため、平均は0となります。

式のVIcosφについては、φは位相差であり時間経過に応じて変化することがないため、VIcosφは基本的に一定であることからそのまま平均値となります。

以上が交流電力の基本的な概要と計算方法であり、交流電力PはVI×cosφで求めれることがわかります。

皮相電力とは


それでは皮相電力とはどのようなものなのかというと、見かけ上の電力(理論上の電力)が皮相電力です。

見かけ上と言われると、ん?結局どうゆうことだ?って思いますよね。

電気回路では、電源から送り出した電力が必ず全て消費される訳ではありません。

もちろん全て消費される場合もありますが、接続している負荷によって消費されたり、されなかったりします。

例えば、電源から100Wの電力が供給されていたが、実際は80Wしか消費されていなかったという場合は、皮相電力は100Wということになります。

このように電源の電力と実際に消費されている電力が違う場合があるため、機器を取り扱う際は見かけ上の電力を使用する必要があります。

皮相電力の計算方法


皮相電力の計算方法は下記のとおりです。

$$Ps=VI [V・A]$$

皮相電力は量記号にPsが使われ、単位は[V・A]になります。

皮相電力はあくまで理論上の電力であり、実際に消費される電力を指している訳ではないので単位には[V・A]が使われています。

また、交流電力は基本的にP=VIcosθ[W]で計算しますが、皮相電力は理論上の電力のため、電圧と電流の位相差によるロスを無視しています。

そのため、皮相電力の計算式にはcosθが付きません。

皮相電力はどんな時に使う?


皮相電力はどのような時に使うのかというと、機器やブレーカーなどの容量を検討したい時に使用します。

例えば、機器に1500[V・A]と書かれていれば、コンセントの電圧は100Vが主流のため15A程電流が流れることが予想できます。

その時に家のブレーカーに「15A」と書かれていたら、ちょっと不安になりますよね。

このように機器を使う際の事前検討としてよく利用されます。

皮相電力の例題


実際に皮相電力を計算で求めてみましょう。

下の図のような抵抗R(30Ω)とコンデンサXc(40Ω)が直列に接続された、交流回路の皮相電力を計算してみます。

皮相電力を求める際に必要な電圧は分かっているので、まずは電流を計算します。

電流を計算するために、抵抗RとコンデンサXcのインピーダンスZ(合成抵抗)を求めると、下記のようになります。

$$Z=\sqrt{R^2+Xc^2}=\sqrt{30^2+40^2}=50[Ω]$$

回路全体の抵抗は50Ωと分かったので、電流と皮相電力はそれぞれ下記のとおりです。

$$I=\frac{V}{Z}=\frac{100}{50}=2[A]$$

$$Ps=VI=100×2=200[V・A]$$

よって、この回路の皮相電力Psは200[V・A]となります。

まとめ

・皮相電力とは見かけ上(理論上)の電力のこと

・皮相電力は下記の式で計算することができる

$$Ps=VI [V・A]$$

・皮相電力は機器の容量などを検討したい時に使用されている

以上、今回は交流電力の基本と皮相電力の概要についての解説でした。

皮相電力を確認して容量の検討をするのはとても重要なことです。

また、検討をする際には交流電力の基本的な考え方、交流電力が消費されないケースはどのような時か理解しておくことも大切です。

以下の記事では交流電力の基本的な考え方、消費されないケースなどについて解説していますので、併せて是非読んでみてください。

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電気について勉強を始めて12年。その内9年は変電所や発電所に関わる仕事を経験し、現在も目に見えない危険な電気と戦う毎日を過ごしている。電気について気楽に学べる場所があればいいなと思い、第一線の現場で得た電気系知識、経験などを発信しています。