交流電力は常に向きや大きさが周期的に変化しています。
そのため直流電力とは違い、電源から送り出された電力が全て消費されない場合があります。
実際に消費された交流電力を知りたい時には、有効電力と力率というものを使い計算しなければいけません。
今回の記事では、なぜそのようなことが起きるのか、有効電力と力率とは一体何か?という部分を解説していきます。
有効電力とは
有効電力とは、実際に回路で消費された電力のことをいいます。
先程もお話しましたが、交流電力は電源から送り出された電力が全て消費されないことがあります。
なぜそのようなことが起きるのかというと、交流には位相というものがあるからです。
交流電力は、電圧と電流の位相が同じ位相であれば全て消費されますが、電圧と電流に位相差がある場合は電力が消費されません。
電圧と電流に位相差が発生する時というのは、負荷にコイルやコンデンサを接続している時や地絡などの事故発生時があります。
交流電力は大きさが常に変化しており、電圧と電流に位相差がある場合は正弦曲線を描くことになります。
そのため、電圧と電流に位相差がある場合は、電力の平均値が0になってしまうため電力が消費されないことになります。
なぜ、この時の平均値が0になるのかは下記の記事で詳細を解説してますので、気になる方は参考にしてください。
このような理由から電源から供給される電力と実際に負荷で消費している電力に相違が生じることがあるため、有効電力というものが必要になってきます。
有効電力と力率の計算方法について
有効電力は下記の式で計算することができます。
$$P=VI\cos{φ}[W]$$
なぜこのような計算式になるのかは下記の記事で詳細を解説していますので気になる方は参考にしてください。
【最強のわかりやすさ】皮相電力とは?計算方法をわかりやすく解説
また、式のcosφは力率[λ]といい、φの部分は力率角といいます。
力率[λ]とは、電源から供給される電力のうち、実際に回路で消費されている電力がどれくらいなのかを示す値で百分率(%)で表します。
例えば、電源から供給される電力が全て回路で消費される場合は、力率cosφ=1.0=100%ということになります。
電源から供給される電力が回路で9割ほど消費されている場合は、力率cosφ=0.9=90%となっていきます。
つまり、力率cosφが低い回路は本来必要な電力よりも電源の電力を大きくする必要があるため、効率が悪い回路といえます。
力率はcosφであることから、力率角φ(電圧と電流の位相差)によって変化します。
そのため、力率を効率よくしたい時には力率が1(100%)に近づくような力率角(電圧と電流の位相差)にする必要があります。
ちなみに、力率角が電圧の位相よりも電流の位相が遅れている時の力率は遅れ力率といい、反対に電流の位相が進んでいる時は進み力率といいます。
また、力率cosφは下記の式で計算することができます。
$$λ=\frac{P}{Ps}=\frac{VI\cos{φ}}{VI}=\cos{φ}$$
Pは有効電力、Psは皮相電力です。
皮相電力とは電圧と電流の位相差を無視した、理論上の電源電力のことです。
力率は電源電力のうち有効電力がどれくらいなのかを示すものなので上記のような式になります。
以上のことから、実際に消費された電力を知るためには上記の計算をする必要があり、有効電力は力率によって大きく変化することがわかります。
有効電力と力率の例題
実際に有効電力を求めてみましょう。
下の図のような力率が0.8、抵抗R(40Ω)、コイルXL(10Ω)とコンデンサXc(40Ω)が接続された回路があったとします。
有効電力を求めるためには、電流がわからないといけないので、まずは電流を求めます。
電流を求めるために、回路全体の抵抗(インピーダンスZ)を計算すると下記のようになります。
$$Z=\sqrt{R^2+(XL-Xc)^2}$$
$$=\sqrt{40^2+(10-40)^2}$$
$$=\sqrt{2500}=50[Ω]$$
回路全体の抵抗がわかったので電流Iは下記の計算で求めることができます。
$$I=\frac{V}{Z}=\frac{100}{50}=2[A]$$
回路の力率は0.8であることから、有効電力Pを求めると、
$$P=VI\cosφ=100×2×0.8=160[W]$$
となり、この回路では実際には有効電力として160W消費されているということになります。
まとめ
・有効電力Pは実際に回路で消費されている電力のことであり、下記の式で計算できる
$$P=VI\cos{φ}[W]$$
・力率[λ]とはcosφであり、電源から供給される電力のうち、実際に回路で消費されている電力がどれくらいを示すものであり下記の式で計算できる
$$λ=\frac{P}{Ps}=\frac{VI\cos{φ}}{VI}=\cos{φ}$$
・力率を決めるφの部分を力率角といい、電圧と電流の位相差のことをいう
・力率角が電圧の位相よりも電流の位相が遅れている時の力率を遅れ力率といい、電流の位相が進んでいる時は進み力率という
以上、今回は有効電力と力率についての解説でした。
回路で実際に消費される電力を知りたい!というケースは電気関係の仕事をしていると、よくあることなのでとても重要なことです。
また、力率に影響する位相についても基本となる重要な部分です。
以下の記事では、交流の位相とはどのようなものなのかを解説していますので、併せて是非読んでみてください。
この記事を読むと、有効電力と力率について理解することができます。