交流の電気は常に向き、大きさが変化するものです。
そして、交流の勉強をしていると大きな壁になるのが位相というものです。
つまり、この位相というものを理解さえすれば交流の分野において他に怖いものはありません。
位相を制する者は交流を制する。
今回は交流の電気の位相について簡単にお話をしていきます!
交流の位相とは?
そもそも位相とは何なのか?というと、交流は周期的な変化を波の様にずっと繰り返しています。
その波の変化の中である時間の時(タイミング)に波がどの位置にいるのかを示すものが位相です。
交流の変化の仕方、基本的な性質については、以下の記事を参考にして下さい。
位相の単位には°(度)、rad(ラジアン)が使用されます。
もちろん、直流には波がありませんので位相はありません。
例えば下の図1において、位相が90°の時の交流の大きさはAの大きさになりますが、位相が0°、180°の時は大きさは0になります。
このように位相というものがあると、何度も繰り返される1周期の中の、どのタイミングのことを指すのかが分かるようになります。
では位相が0°、180°の時はなぜ電圧は0になるのか、交流の波形はなぜこのような形になるのでしょうか。
これも位相が関係してきますが、ベクトルというものも少し関係してくるので、ベクトルについても次にお話します。
交流のベクトルについて
交流の大きさと位相はベクトルというもので表すことができます。物理などで出てくる、あのベクトルです。
ベクトルというのは大きさと向きを持つものを図で表したものです。
矢印の方向が向きを示し、矢印の長さが大きさを表します。
例えば大きさがE、位相が45度の交流があったとします。
これをベクトルで示すと図2のようになります。
線の長さがE、位相はX軸の水平方向を0°とし、半時計周りの方向に45°の向きになります。位相の°がそのまま角度を表すようなイメージです。
ちなみに位相が-45°の場合は時計周りに45°となります。
このように交流は大きさと位相が分かれば、ベクトルで表すことができます。
ベクトルによる考え方は、電気理論の基本となるとても重要な部分です。
なぜなら、電気業界では、設備の設計などを行う時は、このベクトルを複数合成したりすることで、設備の検討を行うためです。
ベクトルの考え方については、以下の記事で解説をしていますので、気になる方は参考にしてみてください。
ベクトルと正弦波形について
ではこのベクトルが波形とどう関係しているのかというと、下の図3の(1)の様な交流のベクトルがあったとします。
ベクトルの青線をE、位相をθ、としたとします。Eの矢印の先からX軸に赤い垂線を引くと、赤い垂線はEのY軸の大きさになります。
この青線と赤線のおかげで三角形が完成するため、三角関数を使うと、Y(赤線)=Esinθとなります。
この関係から(2)の図で縦軸をEのY軸方向の大きさ、横軸を位相θとし、(1)の図で緑線の位相の時のYを求めて、点を打っていくと、(2)の波形の様になっていきます。
このことから、位相が0°、180°の時は大きさは0になり、位相が90°、270°の時は大きさが最大になることが分かります。
これが交流が正弦波形となる理由です。
位相の進みと遅れについて
2つ以上の波形の位相を比べる時に、位相が違う場合、先に波形が変化している方は位相が進んでいると言います。
また、波形の変化の周期が遅い方を位相が遅れていると言い、2つ以上の波形の位相の差を位相差といいます。
ベクトルで表す時は、位相が大きい方が進み、位相が小さい方が遅れの位相となります。
例えば下の図4で位相が90°の時の2つの波形を見た場合、先に紫の波形がピークを迎え、180°の時には先に0になっているのが分かります。
この場合は、紫の波形が90°位相が進んでおり、黄色の波形が90°紫の波形に対して遅れているといい、位相差が90°あることになります。
ちなみに電圧の大きさが違う、もしくは同じ電圧で2つの波形があり、位相が全く同じ波形がある場合、それらの波形は同相や同位相と呼びます。
まとめ
位相はある特定の時間における波の位置を示すもの(周期のタイミング)
交流はベクトルで表すことができる
ベクトルをもとに、交流の正弦波形を描くことができる
位相には進みと遅れがあり、先に変化する方が進みの位相、変化が遅いほうが遅れの位相となる。位相が同じ場合は同相、同位相と呼ぶ
以上が、交流の位相についてまとめたものです。
位相は交流の性質上どうしても存在してしまうものです。
理解するのに時間がかかると思いますが、これをマスターすれば交流マスターになったも同然です。
是非参考にしてみて下さい。
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