交流の電気は複素数で表すことができます。
「複素数って何?」、「なぜ電気を複素数にする必要があるの?」と思いませんか?
複素数と聞くと難しそうなイメージがあり、壁を作りたくなりますが、コツを掴めばきちんと理解することができます。
今回の記事では複素数とは何か、交流を複素数で表すことにどんなメリットがあるのかという点を解説していきます。
目次
なぜ交流を複素数で表す必要があるのか?
なぜ交流を複素数で表すのかというと、計算やベクトルを検討する際に便利だからです。
ベクトルについては下記の記事で詳細を解説していますので、気になる方は参考にしてください。
【最強のわかりやすさ】三相交流のベクトル図について簡単に解説
例えば、交流のベクトルを考える際に合成や分解は何となくイメージが付くと思います。
ベクトルの合成や分解というのは、あくまで足し算や引き算をしていることになります。
もしも、「ベクトルどうしをかけてください」、「この数でベクトルを割ってください」と言われたら合成と分解だけでは困難です。
しかし、複素数があれば、かけ算や割り算も簡単になります。
なぜなら、複素数の最大の利点は数でありながらベクトルとして表示をすることもできるからです。
以上のことから交流の電気において、複素数はとても活躍しています。
実数と虚数とは?
少し数学っぽいお話になってしまいますが、複素数というのは実数と虚数というものを組み合わせたものです。
そのため、まずは実数と虚数がどのようなものかを知る必要があります。
実数と虚数にはそれぞれ下記の特徴があります。
実数
2、ー5など私達が普段よく使用する数が実数です。
虚数
虚数とは2乗をするとー1になる数を虚数といいます。
実際は2乗をして負になる数というのは実在しないため、あくまで存在する仮定で扱われています。
存在することを仮定すると、計算をする時に色々と便利になることから使用されています。
虚数は存在しない数であることから数学ではiと表しますが、電気業界では電流iと区別するためにjで表します。
例えば、j×j=ー1というような感じです。2乗になればー1になります。
以上の2つの数を組み合わせたものが複素数です。
では、どのように複素数に使用されているのか解説をしていきます。
複素数について
複素数とはa+bj、a-bjのような形で表される数のことをいいます。
aとbは実数、jは虚数です。この時のaは実部、bは虚部といいます。
また虚部の符号だけが違う複素数は共役複素数といいます。(a+bjの共役複素数はa-bj)
複素数も虚数を含むことから実際は実在しない数ということになります。
複素数は基本的にこの実部と虚部で構成されています。
複素数の計算方法について
複素数どうしの計算には決まりがあります。
それぞれ下記のとおりです。
和(足し算)と差(引き算)
複素数の和と差については実部は実部どうし、虚部は虚部どうしで計算をします。
$$(6+7j)+(2+3j)=8+10j$$
$$(6+7j)-(2+3j)=4+4j$$
積(かけ算)
jはXやZなどの文字と同じように扱い計算をします。
また、計算の中でjの2乗ができた時はー1とします。
商(割り算)
分母に複素数がある場合は分母の共役複素数を分子と分母にかけて、分母の複素数を実数に変換してから計算します。
$$\frac{2+j4}{3+j5}=\frac{(2+j4)×(3-j5)}{(3+j5)×(3-j5)}$$
$$=\frac{6-j10+j12+20}{9-j15+j15+25}=\frac{26+2j}{34}$$
$$=\frac{13+j}{17}$$
計算の中でjの2乗ができた時はー1とします。
以上が複素数の基本的な計算の仕方になります。
複素数のベクトル表示について
実は複素数はベクトルとして表示をすることもできます。
平面座標の横軸を実部、縦軸を虚部とすることでベクトルとして表示できます。
この時の複素数を表示している平面座標を複素平面といいます。
例えば、2+j4の複素数をベクトルで表示すると下の図のようになります。
また、複素数のベクトルで重要なのは、複素数にjをかけた時、ベクトルは90°反時計方向に回転するということです。
例えば、2+j4にjをかけると、-4+j2です。
-4+j2をベクトルで表示してみると、下の図のようになります。
2+j4のベクトルと比べると、90°回転していることが分かります。
このような性質があることから、縦軸の2jや3jなどは、横軸の実部にjをかけた際の移動先を示しているとも言えます。
とりあえず、jをかけた時は90°反時計方向に回転することを覚えておきましょう。
まとめ
・複素数とは実部と虚部から構成された数
・電気業界では複素数はjとして扱う
・複素数はベクトルとして表示することもでき、jをかけると90°反時計方向に回転する
・交流の電気ではベクトルを取り扱うことが多いため、複素数を使うことで計算やベクトル検討が簡単になる
以上、今回は交流の複素数の必要性と概要についての解説でした。
電気というより、ほぼ数学の内容になってしまいました。
しかし、複素数はそれほど、交流の電気と関りがあるということです。
また、以下の記事では交流とはどのようなものなのか解説をしていますので、あわせて是非読んでみてください。
【3分で分かる!】交流の電圧、電流とは?
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