パーセントインピーダンスを使うと、回路の様々な計算を簡単にすることができますよ。
パーセントインピーダンスとは、電気回路における重要な概念の一つです。
この記事では、パーセントインピーダンスがなぜ必要なのか、そしてその計算式について詳しく解説します。
短絡容量を求めるためのカギとなる知識を身につけ、電気工学における理解を深めていきましょう。
目次
パーセントインピーダンスとは
パーセントインピーダンスは、電気回路がどれだけ効率的に電力を伝送できるかを示す指標で、%Zで表します。
百分率で表すことから百分率インピーダンスとも呼ばれています。
例えば以下のような回路の%Zを考えてみましょう。
この回路の場合、%Zは下記のようになります。
$$%Z=\frac{ZIn}{E}\times{100}[%]$$
Inは定格電流で分母が定格電圧、分子は定格電流が流れた時の電圧降下です。
つまり、%Zというのは定格電圧を100とした時、電圧降下が100のうちどれ程の割合かを表す比であると言えます。
例えば、ある回路で%Zが5%であった場合、その回路では定格電圧の5%に相当する電圧降下が発生していることを意味します。
電圧降下については以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
定格電圧と電圧降下の比であることはわかったけど、そもそも比で表す必要ってあるの?
実は%Zを使用すると様々なメリットがあります。必要な理由を説明します。
なぜパーセントインピーダンスが必要なのか
%Zを使用することで、いくつかメリットがあります。
主なメリットは下記のとおりです。
- 電圧降下、短絡電流の計算が簡単になる
- 機器の容量計算ができる
電圧降下、短絡電流の計算が簡単になる
電圧や電流の大きさが変わった場合、大きさが変わる度に計算をし直す必要があります。
例えば、回路の中に変圧器がある場合、変圧器の一次側と二次側では電流が違うため、巻数比をもとに一から計算し直すことになります。
しかし、%Zがわかっていれば、回路特性による電圧降下の割合が分かっているため、計算の手間を省くことができます。
機器の容量計算ができる
開閉機器(遮断器など)を設置する時には、短絡電流にも耐えられる性能を持っていなければいけません。
%Zがわかっていると、短絡事故時に流れる電流の大きさを予測することができ、それに応じて必要な容量を検討することができます。
確かに、毎回計算し直すのは大変かも、、。容量って具体的にはどのようなものなの?
容量というのは電圧×電流[V・A]のことです。電圧や電流が大きくなり、この容量を超えてしまうと機器が焼損、もしくは、ば~くはつしてしまいます。%Zによる容量計算については順を追って解説します。
パーセントインピーダンスの計算式
%Zの計算方法は回路が単相か三相かによっても少し異なるため注意が必要です。
主な計算方法は下記のとおりです。
単相回路のパーセントインピーダンス
単相回路の場合は先程も少し説明しましたが、以下の式で計算することができます。
$$%Z=\frac{ZIn}{E}100[%]$$
%Zは上記の表し方の他にも、定格容量S(S=EIn)[KV・A]を使って表すことも可能です。
定格電圧Eを[KV]とし、式を変形させると以下のようになります。
$$%Z=\frac{ZIn}{E}\times{100}$$
$$=\frac{ZIn}{E\times{1000}}\times{100}$$
$$=\frac{ZIn}{10E}[%]$$
分母と分子にEをかけると、
$$=\frac{ZInE}{10E^2}=\frac{ZS}{10E^2}[%]$$
となり、電流が分からなくても、機器の定格電圧と定格容量から%Zを計算することができます。
三相回路のパーセントインピーダンス
三相回路の%Zは以下の式で計算することができます。
$$%Z=\frac{ZIn}{\frac{Va}{\sqrt{3}}}\times{100}・・・①$$
Vaは線間電圧のため、相電圧にすると1/√3倍です。
三相回路も単相回路と同様に定格容量S(S=√3VIn)[KV・A]による表し方をすると、以下のようになります。
Vaを[KV]にし、①の式に分母と分子に√3Vaをかけると、
$$%Z=\frac{ZIn}{\frac{Va\times{1000}}{\sqrt{3}}}\times{100}$$
$$=\frac{\sqrt{3}ZIn}{10Va}$$
$$=\frac{\sqrt{3}ZInVa}{10Va}$$
$$=\frac{ZS}{10Va^2}[%]$$
単相回路の時と式の形が同じことから、三相でも単相でも上記の式が使えることがわかります。
また、定格容量Sの大きさに応じて%Zは大きくなることから、%Zは定格容量に比例します。
ちなみに、三相回路の線間電圧と相電圧が√3倍の関係になる理由については以下の記事で解説しています。
定格容量がわかるとパーセントインピーダンスを計算できるんだね!
はい!しかし、回路に定格容量が違う機器が2つ以上ある場合は%Zの換算という作業が必要になります。
パーセントインピーダンスの換算と基準容量
%Zは定格電圧に対する電圧降下の割合を表した比のことです。
定格容量に応じて大きさが変化しますが、回路に違う容量を持つ機器が複数ある場合、そのまま計算することができません。
例えば以下のような%Zが20%の機器A(10000[KV・A])と%Zが不明な機器B(20000[KV・A])が接続された回路があったとします。
この場合、機器Aと機器Bの%Zを合計すれば、回路全体の%Zとなりますが、容量が違うため、%Zの換算という作業が必要です。
機器Bの%Zを機器Aの%Zに換算をすると次のようになります。
$$%Z(機器B)=20%\times{\frac{20000}{10000}}=40%$$
%Zは回路の性能を表す比であることから、機器Bを10000[KV・A]相当時の%Zに合わせると40%です。
この回路全体の%Zは20%+40%=60%ということになります。
また、今回の機器Bのような換算の基準とされた容量を基準容量といいます。
換算しないと正確な%Zにはならないんだ。ちなみに、基準容量はどっちを選んでも問題ないの?
今回は機器Bを基準容量としましたが、好きな方を基準にして問題ないですよ!しかし、計算が分数のため、基準容量は大きい容量を選んだ方が計算しやすいですね。
パーセントインピーダンスで短絡電流を求める
短絡電流の計算式に%Zの変形させた式を入れることで、%Zで短絡電流Isを求める式を作ることができます。
まずは短絡電流Isの計算式を考えます。
以下のような回路で三相短絡が発生した場合、相電圧は線間電圧の1/√3倍となり、短絡電流Isは次のように計算することができます。
$$Is=\frac{Va}{\sqrt{3}Z}[A]・・・②$$
次に%Zの式を変形させます。三相回路の%Zの式に√3を分母と分子にかけます。(分母の√3を消すため)
$$%Z=\frac{ZIn}{\frac{Va}{\sqrt{3}}}\times{100}=\frac{\sqrt{3}ZIn}{Va}\times{100}$$
式を変形させると、
$$Z=\frac{%Z\times{Va}}{\sqrt{3}In\times{100}}[Ω]・・・③$$
②の式に③の式を代入し、さらに変形すると、
$$Is=\frac{Va}{\sqrt{3}Z}=\frac{Va}{\sqrt{3}}\times{\frac{\sqrt{3}In\times{100}}{%Z\times{Va}}}$$
$$=\frac{100}{%Z}\times{In}[A]・・・④$$
このことから、100を%Zで割ることで定格電流の何倍の短絡電流が流れるのかを計算することができます。
また、%Zが小さい程、短絡電流は大きくなることがわかります。
短絡については以下の記事でも解説していますので、是非参考にしてください。
パーセントインピーダンスによる短絡容量の計算
三相短絡が発生し、短絡電流Isが流れた時の容量を短絡容量といいます。
短絡容量を計算すると、短絡事故にも耐えられる回路を設計するには、どれくらいの容量が必要なのかを知ることができます。
短絡容量の計算をすると、電線が溶けるなどのリスクを回避することが可能なためとても重要です。
三相短絡時の短絡容量は以下のように計算することができます。
$$短絡容量=3\times{\frac{V}{\sqrt{3}}}\times{Is}$$
先程の④の式をIsに代入し、分母の√3を有利化(分母の√をはずすこと)します。
$$=\sqrt{3}V\times{\frac{100}{%Z}}\times{In}$$
$$=\sqrt{3}VIn\times{\frac{100}{%Z}}[KV・A]$$
√3VInは定格電流と電圧をかけているため、皮相電力といえます。
そのため、短絡容量の計算式は以下のようになります。
$$短絡容量=\sqrt{3}VIn\times{\frac{100}{%Z}}[KV・A]$$
皮相電力については以下の記事で詳細を解説していますので、気になる方は参考にしてください。
短絡電流が分からなくても%Zと定格電流で計算できちゃうんだね!
短絡電流の予想値に不安がある場合は、この計算をすると便利ですよ!
まとめ
・パーセントインピーダンス(%Z)とは、定格電圧に対する電圧降下の割合のこと
・%Zは以下の式で計算できる
%Z=ZIn/E×100 [%]※三相回路であればEは相電圧
・%Zが違う機器が複数ある場合、全体の%Zを計算するには容量の換算をする必要がある
・%Zで短絡電流や短絡時の容量を計算できる
以上、今回は%Zに関する解説でした。
特に%Zによって短絡容量を求めることは、機器の破損を防ぐためにもとても重要なことです。
また、電気回路の計算において、インピーダンスZを計算することも重要なことです。
以下の記事では、電気回路の計算について詳細を解説していますので、併せて是非読んでみて下さい。
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