【最強のわかりやすさ】避雷器(アレスター)とは?仕組みを簡単に解説!

雷の力には、膨大なエネルギーがあります。特に、建物や電気設備に対する雷の襲来は、大きな損害をもたらす可能性があります。

そこで頼りになるのが「避雷器」、または一般的に知られるところの「アレスター」です。

この記事では、避雷器の仕組みに焦点を当て、その役割や構造、効果的な設置方法について詳しく解説していきます。

避雷器がどのように雷の被害を軽減し、私たちの安全を確保するのか、その全貌に迫りましょう。

いずみ

この記事を読むと、避雷器の役割や仕組みについて理解することができます。

避雷器の役割とは

雷は、自然界の力の中でも最も破壊的なものの一つです。雷の放電は、建物や電気設備に大きな損傷を与え、火災や機器の故障を引き起こします。

こうした被害を最小限に抑え、安全な環境を確保するために避雷器が不可欠です。

避雷器の主な役割は、雷が直撃した際に発生する高電圧のエネルギーを大地へ逃がすことにあります。

通常、避雷器は建物の高い部分や電気設備に設置され、雷が接近すると、避雷器はそのエネルギーを吸収して適切な大地へ逃がします。

これにより、建物や機器に流れ込む雷のエネルギーをコントロールし、損傷を最小限に食い止めます。

なぜ、異常な電圧を大地に逃がすのかというと、大地の抵抗はほぼ0Ωであるため、大地が一番逃がす場所として適しているからです。

電気は基本的に抵抗の低い方へ流れる性質があるため、異常な電圧を逃がす先としては、どの電気回路よりも抵抗が低いことが求められます。

大地の抵抗が0Ωになる理由は以下の記事で解説していますので、気になる方は参考にしてください。

避雷器が果たす役割は、単にエネルギーの逃がし役だけに留まりません。同時に、周囲の環境への影響も軽減します。

例えば、雷の直撃によって発生する火災の危険性を低減し、近隣の建物や機器にも影響が及ばないようにします。

そのため、避雷器はあらゆる種類の建物や施設において、安全性を向上させる重要な設備となっています。

また、避雷器が果たす役割は、稲妻の被害を予防するだけでなく、開閉サージ電圧から機器を保護する目的もあります。

開閉サージ電圧とは、遮断器などの開閉器が回路を開閉する時に発生する瞬間的な異常な電圧のことです。

瞬間的ではありますが、異常な電圧であることから、機器の故障などの原因となってしまいます。

現代の生活においては、コンピュータや通信機器、制御システムなど、異常な電圧によって引き起こされる機器の故障は致命的な問題となり得ます。

避雷器が機能することで、これらの機器を異常な電圧から守り、システムの安定性や機器の健全性を維持することが可能です。

総じて、避雷器は雷の脅威に対して積極的に立ち向かい、私たちの生活や産業を安全に保つための重要な要素として、欠かせない存在となっています。

次に、避雷器の具体的な構造に焦点を当てて見ていきましょう。

避雷器の構造

避雷器は、雷のエネルギーを逃がすための特殊な構造を持っています。

基本的に雷が直撃した際に発生する高電圧を吸収し、大地へ逃がせる構造になっています。

以下に、避雷器の主要な構成要素を紹介します。

  1. 導体部分: 避雷器の中心的な部分は導体です。これは、雷のエネルギーを吸収し、大地へ逃がす役割を果たします。一般的には、銅やアルミニウムといった高導電性の材料が使用されます。導体は適切な太さや形状で設計され、最大の効率で雷のエネルギーを処理できるように工夫されています。
  2. 絶縁体: 避雷器の導体は絶縁体によって囲まれています。これは、導体が雷のエネルギーを逃がす際に、周囲の構造に影響を与えないようにするためのものです。絶縁体は通常、プラスチックやセラミックス(陶器)などが使用され、適切な絶縁性能を提供します。
  3. 接地部: 避雷器の効果を最大限に引き出すためには、導体から逃がされたエネルギーを適切な大地へ導く必要があります。そのため、避雷器には接地部が設けられています。大地への確実な導通を施すことで、雷のエネルギーが安全に地面へ逃がされます。
  4. 保護装置: 近年の避雷器には、過剰な電圧や電流から機器を保護するための装置も搭載されることがあります。これにより、雷による損傷だけでなく、その後の過電流による被害も防ぐことができます。
  5. 特性要素:大地と電路の間に設ける抵抗素子です。SiC(炭化ケイ素)やZnO(酸化亜鉛)が使用され、この素子の電気特性を利用して制限する電圧や放電電流を調整します。

避雷器の構造は、これらの要素が緻密に組み合わさることで、確実かつ効果的に雷のエネルギーを処理できるように設計されています。

また、避雷器にはギャップ付き避雷器ギャップレス避雷器があります。

ギャップというのは、隙間のことです。回路の間に隙間を設けるタイプと設けないタイプが存在します。

ギャップ付きとギャップレスの違いの詳細は以下のとおりです。

ギャップ付き避雷器

ギャップ付き避雷器には大地と電路の間にギャップが設けられています。

普段は電路と大地の間に隙間があることから、大地と導通状態にはなっていません。

雷などによって、異常な電圧が電路に発生すると、電路と大地のギャップに放電が発生します。

この放電が発生する時というのは、異常な電圧により、ギャップの絶縁性が耐えられなくなり、(絶縁破壊)電路と大地が導通状態になっています。

絶縁破壊の詳細については以下の記事で解説していますので、気になる方は参考にしてください。

これにより、異常電圧を大地へ逃がすことが可能になります。

特性要素にはSiC(炭化ケイ素)やZnO(酸化亜鉛)が使用されます。

ギャップレス避雷器

大地と電路にギャップがないため、大地と電路がつながった構造をしています。

大地と常につながることから、SiC(炭化ケイ素)を特性要素として使用することができません。

SiCは抵抗が低いことから、特性要素として使用すると、電圧・電流が常に大地~電路間にかかってしまいます。

そのため、ギャップレスタイプには高抵抗のZnO(酸化亜鉛)を特性要素として使用します。

ZnO(酸化亜鉛)であれば、普段は電圧・電流を電路にかけ、異常な電圧の時のみ大地へ電圧を逃がすということが可能になります。

これらの構造が正しく機能することで、身の安全や貴重な機器が雷から守られています。

次に、避雷器の具体的な仕組みに焦点を当てて見ていきましょう。

避雷器の仕組み

避雷器の仕組みは、雷が発生した瞬間に迅速に反応し、そのエネルギーを適切に処理することにあります。

以下に、避雷器がどのように機能するかについて詳しく解説します。

  1. エネルギー吸収: 避雷器の導体部分は、雷のエネルギーを吸収することができるように設計されています。雷が直撃すると、避雷器の導体がその高電圧エネルギーを吸収し、これを一時的に蓄えます。この段階で、避雷器は建物や機器に流れ込む雷のエネルギーを遮断し、損傷を最小限に食い止める役割を果たします。
  2. エネルギーの逃避: 避雷器は、吸収したエネルギーを大地へ逃がすことが重要です。接地部分を通じて、導体が大地へ確実に導通することで、雷のエネルギーは安全に大地へ逃がされます。この際、適切な接地は避雷器の機能を最大限に引き出すために欠かせません。
  3. 再利用可能性: 避雷器は、一度作動した後も再利用可能であることが求められます。導体がエネルギーを吸収した後は、定期的に点検やメンテナンスが行われ、必要に応じて避雷器が元の状態に戻るように調整されます。これにより、安定した避雷機能が長期間提供されることが確保されます。

避雷器の仕組みは、これらの段階が連携して機能することで、雷の被害を最小限に食い止めます。

近年では、先進的な技術の導入により、避雷器はより高度で効果的な仕組みを備えるようになり、私たちの生活と貴重な機器を確実に守っています。

次に、避雷器の種類について詳しく見ていきましょう。

避雷器の種類

避雷器にはさまざまな種類が存在し、それぞれ異なる特長や適用範囲を持っています。

建物や機器の種類、使用環境に応じて適切な避雷器を選ぶことが重要です。

代表的な避雷器の種類とその特徴については以下のとおりです。

  1. 通常避雷器: 通常避雷器は、最も基本的な形式の避雷器の一つです。このタイプの避雷器は、導体と非導体の間にスパークギャップ(放電が起こる隙間)を持ち、雷のエネルギーが導体と非導体の間を通ることで発生するスパークによって遮断します。一般的な建物や低電圧の電気設備に使用されます。
  2. 酸化亜鉛避雷器: 酸化亜鉛避雷器は、高い電圧での避雷に特に効果的な避雷器です。酸化亜鉛の特性を利用して、雷の発生時に素早く反応し、エネルギーを逃がします。この種の避雷器は、高層ビルや大規模な電力設備など、高電圧環境に適しています。
  3. 溶融型避雷器: 溶融型避雷器は、通常避雷器とは異なり、雷のエネルギーを逃がす際に溶融した部分を排除する仕組みを持っています。このタイプの避雷器は、再利用が難しいものの、発生した火花や過電流を外部に排除することで高い信頼性を提供します。
  4. 電力線避雷器: 電力線避雷器は、電力供給網の上で使用され、雷や過電圧から電力設備を保護します。これは大規模な電力網や変電所において不可欠な避雷器であり、安定した電力供給を確保します。
  5. デバイス保護用避雷器: デバイス保護用避雷器は、個々の電子機器やコンピュータ機器を雷やサージから保護するために使用されます。一般的には、コンセントに接続され、過電圧が機器に影響を与えないようにします。

これらの避雷器の種類は、使用環境や保護する対象によって使い分けされています。

適切な避雷器の選択は、建物や機器の安全性を確保する上で非常に重要です。

次に、避雷器の効果的な設置位置について詳しく見ていきましょう。

避雷器の効果的な設置位置とは

避雷器の効果を最大限に引き出すためには、適切な設置位置が不可欠です。

建物内や施設内での適切な配置は、雷の影響を的確に受け止め、被害を最小限に食い止めるポイントとなります。

避雷器を効果的に設置するためのポイントや注意点について解説します。

  1. 建物の高い位置: 避雷器は、建物の高い位置に設置されることが一般的です。雷は通常、高い場所から地表に向けて放電されるため、建物の屋根や高い構造物に設置された避雷器は、雷の直撃を受けやすくなります。特に、塔や高層ビルなどでは、最上部に避雷器が設置され、雷のエネルギーを逃がすポイントとなります。
  2. 電気設備に近い位置: 電気設備に近い位置に避雷器を設置することで、雷が発生した際に直接的な影響を受ける可能性を低減できます。特に、大規模な電力網や変電所などでは、電気設備に対する適切な避雷対策が不可欠です。
  3. 特定の機器への設置: デバイス保護用避雷器は、個々の電子機器やコンピュータ機器に対する過電圧保護を提供するため、これらの機器に直接設置されることがあります。コンピュータルームや通信機器室などでの設置が一般的であり、機器の安全性を確保します。
  4. 変電設備周辺: 大規模な電力設備や変電所では、変電設備周辺に避雷器を配置することが効果的です。これにより、雷による過電圧が電力設備全体に波及するのを防ぎ、安定した電力供給を確保します。
  5. 導入前の環境: 避雷器を設置する前に、建物や施設における雷の影響度を評価することが重要です。特に、雷が発生しやすい地域や気象条件、建物の構造などを考慮し、避雷器の最適な設置ポイントを検討します。

これらのポイントを踏まえ、避雷器を効果的に設置することで、雷からの被害を最小限に食い止め、建物や機器の安全性を確保することが可能です。

まとめると、避雷器は正確な設置位置と適切なタイプの組み合わせが成功の鍵となります。

まとめ

・避雷器は雷や開閉サージによる異常電圧を大地へ逃がし、機器を保護する装置

・避雷器にはギャップ付きとギャップレスがある

・避雷器には様々な種類があり、保護対象や使用環境に応じて使い分け、適切な配置に設置することが重要

以上、今回は避雷器の仕組みについての解説でした。

避雷器は雷による損害を最小限に食い止め、安全な環境を確保する手段としてとても重要です。

建物や施設の種類、使用環境によって適切な避雷器を選ぶ必要があり、適切な設置位置も慎重に考慮しなければいけません。

また、電気回路には雷による異常な電圧の他に、短絡や地絡、漏電といった異常現象もあります。

以下の記事では、電気回路の異常現象について詳細を解説していますので併せて是非、読んでみてください。

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いずみ
電気について勉強を始めて12年。その内9年は変電所や発電所に関わる仕事を経験し、現在も目に見えない危険な電気と戦う毎日を過ごしている。電気について気楽に学べる場所があればいいなと思い、第一線の現場で得た電気系知識、経験などを発信しています。