交流の回路には抵抗の他にも電気の流れを妨げようとするものがあります。
その中にはインダクタというものがあり、インピーダンスと呼ばれたりもします。
「インダクタとインピーダンスとは一体何?」「なぜ電流を妨げるんだろう?」と思いませんか?
今回はインダクタの性質やインピーダンスについて解説をしていきます。
インダクタの概要と性質
インダクタとは、一般的にコイルなどの巻き線のことをいいます。
導線で沢山巻き巻きされているものは、全てインダクタだと思ってください。
インダクタの主な性質は下記の2つがあります。
インダクタの電流を妨げる働きについて
1つは交流回路に接続すると電流を妨げる働きをするということです。
なぜ、インダクタを接続すると電流が流れにくくなるのかというと、自己誘導作用が関わってくるからです。
自己誘導作用というのは、自分の回路の磁束が変化した時に、その変化を打ち消そうと回路に逆向きの起電力が発生する現象です。
直流の場合は大きさが一定のため、自己誘導作用が発生しないため、逆向きの起電力は発生しません。
逆向きに起電力が発生すれば、電流が流れにくくなりそうな気がしますよね。
そのため、自己誘導作用によって、電流を妨げられることから、インダクタは抵抗と同じような扱いをされます。
このインダクタによる抵抗は誘導リアクタンスといい、記号はXL、単位には普通の抵抗と同じくΩが使用されます。
誘導リアクタンス(XL)は下記の計算式で求めることができます。
$$XL=ωL=2πfL (Ω)$$
なぜこのような式になるのかというと、式についても自己誘導作用が関係してくるためです。
例えば、下の図のようなコイルのみ接続された交流の回路があったとします。
回路に電流i=√2Isinωtが流れると自己誘導作用により、電流の変化に応じて、逆向きの起電力が発生することになります。
この時の逆向きの起電力は電流と時間の変化、回路の自己誘導起電力がどれ程発生しやすい性質かで決まるため、式で表すと下の式になります。
$$VL=-L\frac{Δi}{Δt}(V)$$
また、起電力Vは回路の電圧降下の和に等しい(キルヒホッフの第2法則)ため、V+VL=0であることから、
$$V=-VL=L\frac{Δ√2Isinωt}{Δt}$$
$$=L\frac{d√2Isinωt}{dt}$$
となり,Vを微積を使って求めると、
$$V=√2ωLI\cosωt=√2ωLI\sin(ωt+\frac{π}{2})$$
となります。
上の式のωLに注目すると、オームの法則のRと同じ様に電流Iをかけることで電圧を求めていることがわかります。
そのため、インダクタ分の抵抗はωLとなります。
ちなみにωは2πflで求められるため、周波数f、自己インダクタンスLが大きい程、誘導リアクタンスが大きくなることがわかります。
以上のことから交流の回路では、巻き線も抵抗を持つものとして扱う必要があります。
インダクタに流れる電流の位相について
もう一つの性質はインダクタに流れる電流の位相が電圧よりも90°遅れる性質があるということです。
言い換えると、電圧の位相が電流の位相よりも90°進むとも言えます。(電流を基準とした場合)
今回は電圧を基準として考えます。
なぜ、電流の位相が電圧の位相よりも90°遅れてしまうのかというと、これも自己誘導作用が関係しているためです。
自己誘導作用は電流の変化に応じて逆向きの起電力が発生します。
そして、その逆向きの起電力は電流の変化が大きい程、大きくなります。
このことを踏まえてインダクタが接続された回路の電圧と電流の波形を見てみると、なぜ90°の位相差が生まれるのかがわかります。
上の波形はインダクタの電圧と電流の波形です。
電圧がほぼ最大の時(①部分)、電流は0になっています。
一方、電圧が0の時(②部分)、電流は最大の大きさになっています。
自己誘導作用は変化が大きい程、強く働くことから、電圧の変化が緩やかな①部分では電流が0になります。
また、電圧が大きく変化している②部分では電流の大きさが最大になります。
その結果、電流の位相は電圧よりも90°遅れる波形となってしまいます。
インダクタの抵抗としての性質、電圧・電流の位相について、以上の2つがインダクタの主な性質となります。
インピーダンスとは
インピーダンスとは電流の流れを妨げるものの総称のことを指します。
電流を妨げるものというのは、上記でお話したインダクタや一般的な抵抗、コンデンサなどがあります。
それらをまとめてインピーダンスと呼んでいます。
男性がイケメンとフツメンに分類されるように、インピーダンスの中に抵抗やインダクタがあるというようなイメージです。
インピーダンスは記号にZを使用し、単位は抵抗と同じくΩが使用されます。
インダクタの性質は何に利用されているか
インダクタの性質は主に電力系統(送電線)等の位相の調整によく利用されています。
例えば、送電線のような長距離の電線は位相が進んでしまうことがあるのですが、インダクタを設置することで位相を遅らせ、品質の良い電力を供給しています。
まとめ
インダクタには自己誘導作用により電流を妨げる性質、誘導リアクタンス(XL)がある
インダクタは自己誘導作用により電流の位相が電圧の位相よりも90°遅れる
インピーダンス(Z)は電流を妨げるものの総称のことをいう
今回はインダクタの性質、インピーダンスについての説明でした。
インダクタやインピーダンスは電気業界では基本的な知識となりますので是非、参考にしてみてください。
また、今回記事で紹介した自己誘導作用についても重要な部分となります。
自己誘導作用については下記の記事で解説していますので、併せて是非、読んでみてください。
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