【最強のわかりやすさ】三相交流のベクトル図について簡単に解説

交流の電気を取り扱う時は、よくベクトルというもので表すことがあります。

交流をベクトルで表せるようになると電圧の計算や事故時の説明などが簡単になります。

交流のベクトルは「物理のような難しいイメージがある」、「合成の仕方がわからない」など少し拒絶反応がでてしまうものです。

しかしそんなベクトルもコツやルールを覚えれば、お絵描きのような感覚で描くことができます。

今回の記事では交流のベクトルの基本的な表し方、合成する時の考え方などについて解説していきます。



ベクトルの基本について


まず、ベクトルとはそもそもどんなものなのかということからお話していきます。

ベクトルというのは、大きさと向きをわかりやすいように矢印で表現した図のことをいいます。

例えば物体の運動や波など、力の大きさと方向が分かればどんなものでもベクトル図として表現することができます。

ベクトルとして何かを描く時は矢印の長さを力の大きさ、矢印の方向を力の方向として描きます。

交流の電気についても同じです。

大きさと向きがあることからベクトル図として表現することができます。

そしてベクトルを記号で表記する時には記号の上にドットを付けて表します

試しに三相交流の電圧をそれぞれベクトル図で表現すると下の図のようになります。

ベクトルの記号としてはAドットBドットCドットです。

三相交流には発電機の構造上、各相の間に120°の位相差があります。

そのため、三相交流の矢印の向きは各相が120°角度のズレた向きとなります。

交流の電気をベクトル図として描く時は、反時計方向を進みの位相(+)時計方向を遅れの位相(−)として描きます。

例えば基準ベクトルを0°として比較ベクトルの位相が45°遅れている場合は0から時計周りに45°の方向がベクトルの向きとなります。

交流の電気は位相が0°~360°と常に変化します。

そのため、ベクトルは時間経過とともに反時計周りにグルグルと回転し続けることになります。

このような回転するベクトルは回転ベクトルと呼ばれています。

しかし、実際に大きさ等を検討するためにベクトルを描く時は大抵、ある位相の時のベクトルを描くことになるため回転することは気にしなくても大丈夫です。

また、交流の電気は大きさも時間経過によって変化してしまうため、基本的に大きさを表す時には実効値をベクトルの大きさとして描きます。

以上が交流の電気をベクトル図として表す時の基本的なルールになります。

これらのことを踏まえて今度は2つ以上のベクトルを合成したり、差を求める場合を考えてみます。

ベクトルの和について


複数のベクトルの合成(和)を求める時は平行四辺形の対角線がベクトルの合成となります。

例えば下の図でベクトルE1E2があったとします。

E1の矢印の先からE2と平行に補助線Aを引きます。

次に、E2の矢印の先からE1と平行に補助線Bを引きます。

こうしてベクトルE1E2補助線A,Bにより平行四辺形が形成され、この平行四辺形の対角線がベクトルE1E2の合成したベクトルとなります。

この合成したベクトルは、ベクトルE2の始まりの点とE1補助線Bの場所に右にスライドさせた時の矢印の先までを線で結んだ時と等しいです。

そのため、あるベクトルの矢印の先から連続して他のベクトルが始まっている時は始まりの点と最後の矢印の先を結ぶだけで合成したベクトルを求められます。

今度は下の図のようなベクトルC、ベクトルD、ベクトルEを合成してみます。

ベクトルが複数ありますが、全て連続して続いているパターンなので、最初と最後を結ぶだけです。

そのため合成ベクトルは下のようになります。

ちなみに、角度が同じ場合のベクトルを合成する時は角度はそのままで2つ分の大きさを足した矢印が合成ベクトルとなります。

このようにベクトルを合成する時は平行四辺形をイメージすること、ベクトルが連続で続いている場合は最初と最後を結ぶことを意識すれば簡単になります。

ベクトルの差について


では、今度はベクトルの差を考えてみます。

下の図のようなベクトルF、ベクトルGの差をF0とします。

F0はベクトルF、ベクトルGの差なので式で表すとF0FGとなります。

この式は言い換えるとF0F+(ーG)とも言えます。

つまり、ベクトルFとベクトルーGの和がF0になるということになります。

ベクトルーGはベクトルGを正反対にしたものという意味で、大きさを変えずベクトルの向きが正反対(180°の方向)のベクトルとなります。

これを踏まえてベクトルF0を描くと下の図のようになります。

これがベクトルF、ベクトルーGの和であり、ベクトルFとベクトルGの差ということになります。

ちなみに、角度が正反対(180°)のベクトルの差は角度はそのままで一つのベクトルからもう一方のベクトルの大きさを引いた矢印がベクトルの差となります。

このようにベクトルの差を求める時は片方のベクトルを反対にしたものを合成することで描くことができます。

ベクトルの例題


実際にベクトルを描いてみましょう。

下の図の三相交流200VのA相、B相、C相、3相分の合成ベクトルを求めなさい。

答えを解説していきます。

今回は3つのベクトルの合成です。

まずは3つの内、どこでもいいので2つのベクトルを平行四辺形をイメージして合成します。

そうすると、残りの1相と大きさが同じで180°反対の向きの合成ベクトルができます。

最初に合成してできたベクトルと残りの1相を合成すると、大きさが同じで180°反対の向きとなることから打ち消し合い0となります。

そのため、答えとしては0が答えとなります。

ちなみに最初の2相分の合成はどの相から合成をしても同じ結果となります。

まとめ

・ベクトルを合成する時は平行四辺形をイメージする

 

・ベクトルを合成する際、矢印が連続して続く場合は始まりと終わりを結ぶことで合成ベクトルとなる

 

・ベクトルの差は片方のベクトルを反対にしたものを合成することで描くことができる

以上がまとめたものです。

今回はベクトルの合成と差の描き方などについての解説でした。

コツを掴むことができれば、お絵描きをしている感覚でベクトルを描けるようになります。

ベクトル図を描ける様になると、異常発生時の電圧や位相などを考えやすくなり便利です。

また、今回記事に記載をしていた三相交流は電気の基本的知識となり重要な部分ですので、下の記事も併せて是非読んでみてください。

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いずみ
電気について勉強を始めて12年。その内9年は変電所や発電所に関わる仕事を経験し、現在も目に見えない危険な電気と戦う毎日を過ごしている。電気について気楽に学べる場所があればいいなと思い、第一線の現場で得た電気系知識、経験などを発信しています。