電気を送る上で欠かせないものが電線です。
電気はビルや海底、地下など様々な場所に送電されていますが、数多く存在する電線の種類から適切な電線を選定し、電気を送っています。
「電線の種類が多すぎて困る!」と感じることはありませんか?
今回の記事では、電線にはどんな種類があるのか、なぜ様々な種類が必要になってしまうのかという点について解説していきます。
電線の種類と一覧
さっそく電線にはどんな種類があるのか見てみましょう。
電線には以下の種類があります。
裸電線
硬銅線
硬銅線は、銅を主成分とする電線です。
銅は金属の中でも特に導電率が高いため、電気を流すのに適しています。
また、名前のとおり硬い銅を使用することから、強度が高く、変形しにくい電線です。
強度が高いことから、変圧器の巻き線などによく使用されています。
軟銅線
軟銅線も銅を使用した電線です。
硬銅線と違い、柔らかい銅を使用しています。
銅には、一定の温度で加熱すると柔らかくなる性質があることから、硬い銅を加熱したものを軟銅線に利用しています。
軟銅線は硬導線よりも、柔軟性があり、導電率も高くなるといったメリットがあります。
鋼心アルミより線(ACSR)
鋼心アルミより線はアルミを使用した電線です。
アルミを使用していることから、軽量で錆びにくいといったメリットがあります。
また、アルミは銅に比べてコストが安いというメリットもあります。
送電線の電線を張る時などは、1回線で数十km以上に及ぶ場所も多々あります。
そのため、軽量でよりコストを抑えられる鋼心アルミより線を使用することが多いです。
絶縁電線
600Vビニル絶縁電線(IV、HIV)
軟銅線にビニルという被覆を覆わせた電線です。
ビニルはポリ塩化ビニルの略で、プラスチックや合成樹脂のことです。
普通の軟銅線と違い、表面がビニルで覆われていることから、表面が絶縁され安全なため、低圧回路では頻繁に利用されています。
感電のメカニズムについては以下の記事で解説していますので、気になる方は参考にしてください。
600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(VVF、VVR)
600Vビニル絶縁電線の上に、さらにシースというビニル被覆を覆ったものです。
普通のビニル絶縁電線の場合、ビニルに傷が付いてしまうと、中の電線が露出してしまい、危険な状態になってしまいます。
そこでビニル被覆の上にシースという被覆をさらに被せることで中のビニル被覆を保護できるようにしているのがこのケーブルです。
600Vビニル絶縁ビニルシースケーブルには平形と丸型の種類があり、平形はVVF、丸型はVVRと呼ばれています。
このケーブルも低圧回路であれば幅広く多くのものに使用されています。
600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CV)
電線を架橋ポリエチレンで覆い絶縁し、ビニル(シース)で架橋ポリエチレン被覆を保護できるようにしたものです。
普通のポリエチレンは絶縁性能が高いですが、熱に弱いというデメリットがありました。
そこで、ポリエチレンの分子を橋を渡すように結合(架橋)し、耐熱性能を向上させたのが架橋ポリエチレンというものです。
架橋ポリエチレンはビニルに比べて、絶縁性能も耐熱性も高いのが大きな特徴です。
600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルは絶縁性能の高さから、低圧回路から高圧、超高圧まで広く利用されています。
多心形電線
硬銅線や鋼心アルミより線などの裸電線に被覆で絶縁された電線を巻き付けた電線です。
多心型電線はどちらの電線が強度を補っているのか勘違いしやすいことから、以下の点に注意しましょう。
強度を補っている線 | 強度を補われている線 | |
間違い× | 巻き付けた電線 | 巻き付けられた電線 |
こっちが正しい!〇 | 巻き付けられた電線 | 巻き付けた電線 |
巻付けた電線がメインの電線です。
多心形電線は低圧架空電線専用の電線となっています。
ケーブル
制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル(CVV)
制御回路に使用するものと言えばこのケーブルです。
機器や制御盤などの制御用ケーブルとして最も利用されているケーブルです。
構造としては、電線をビニルで絶縁し、さらにシース(ビニル)で覆った構造をしています。
ケーブルの構造だけ見ると上記のVVRと同じように感じますが、CVVの最大の特徴は心数を最大で30心まで選べる点です。
心数というのは、ケーブルの中の電線の本数を表すものです。
例えば、3心のケーブルであればケーブル1本の中に3本の電線があることを意味します。
30心の場合、1本の布設で30本分の電線を布設することができるため、接続箇所が多数ある場合はとても便利です。
制御用架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CCV)
電線を架橋ポリエチレンで絶縁し、ビニル(シース)で覆ったケーブルです。
簡単にいうとCVVの架橋ポリエチレンバージョンです。
CCVも最大で30心まで心数を選ぶことができます。
また、CVVよりも耐熱性があることから、許容電流が高く、大きな電流が流れる制御回路に使用されます。
キャブタイヤケーブル
ビニルキャブタイヤケーブル(VCT)
軟銅線をビニルで絶縁し、ビニル(シース)で覆ったケーブルです。
柔軟性がありながら、機械的衝撃にも強いことから、移動用機器や工場などの使用電圧600V以下の回路でよく利用されます。
ゴムキャブタイヤケーブル
ゴム系のキャブタイヤケーブルには第1種~第4種の分類があります。
使用目的や周囲の環境に応じて4種類の中から適切なケーブルを選ぶことができます。
第1種~第4種の特徴は以下のとおりです。
種類 | 特徴 |
第1種 | 天然ゴムキャブタイヤケーブルのみが該当します。電線を天然ゴムで絶縁し、シースにも天然ゴムが使用されたケーブルです。 |
第2種 | 電線をEPゴム(耐熱性のある合成ゴム)で絶縁し、シースにクロロプレンゴム(衝撃耐性と耐熱性のあるゴム)を使用したケーブルです。 最も使用されている種類です。 |
第3種 | シースの中に補強層があり、帆布(綿で織った布)などを入れたケーブル。補強層には帆布などを入れることから、第2種よりもシースが厚くなります。シースが厚い分、衝撃や損傷から電線を保護できます。 |
第4種 | 第3種の構造+電線の間にゴム座床(電線を支えて衝撃を吸収するもの)を追加したケーブル。ゴム座床を追加することから、第3種よりもケーブルが厚くなります。 鉱山など大きな衝撃が発生する環境で使用されます。 |
第4種に近づく程電線を保護できますが、ケーブルが厚くなる分、ケーブルの可とう性(柔軟性や曲げたりする性能)も悪くなってしまいます。
ケーブルの可とう性と衝撃耐性を天秤にかけ、どちらが使用環境に適切か判断する必要があります。
以上、よく利用される11種類をご紹介しました。実際には他にも多くの種類が存在します。
電線の定義とは?
電線の種類はとにかく沢山ある訳ですが、一体どこまでを電線というのでしょうか?
電気設備技術基準という電気設備に関することを色々と決めている法令があるのですが、その法令で電線は以下のように定められています。
「電線」とは、強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物
電技省令第 1 条第六号
で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体をいう。
弱電流の通信線などは電線に該当しませんが、強電流の伝送をしている導体であれば、ケーブルや絶縁電線も全て電線の一種となることがわかります。
電線の基本知識について
裸電線やケーブルなど電線を扱う時は太さや心数に関する知識が必須となります。
太さや心数については以下のとおりです。
ケーブルの心数について
ケーブル1本の中にある電線の本数は心数(C)というもので表します。
例えば、ケーブルを購入する際に4Cと表記がある場合、1本のケーブルに4本の電線があることを意味します。
心数が多いケーブルを選ぶと、ケーブルを布設する回数が少なくて済む、ケーブルの本数が減り機器周りがスッキリするなどのメリットがあります。
電線の太さについて
電線の太さはスケア数(sq)を使用します。
スケアは平方ミリメートルの略で線の断面の直径を表します。
例えば、8sqであれば断面の直径が8mmの電線であることを意味します。
sqは直径の大きさを表すものなので、断面積とは違う点に注意しましょう。
上記2点は電線を扱う時には必ず理解する必要があるため、重要です。
電線の使い分け方法
電線はその用途や特性によって様々な種類に分かれています。
一般的にどのような使い分け方法があるのか、以下に代表的な電線の使い分けとそれぞれの特徴を一覧にしました。
- 導体の材質やコストに基づく使い分け
- 銅線
- 特徴:高い導電性であり、柔軟性がある。
- 用途:家庭用電気配線、低電圧回路など。
- アルミニウム線
- 特徴:軽量であり、比較的低コスト。
- 用途:高電圧送電線、産業用途など。
- 銅線
- 使用環境による使い分け
- 屋内用電線
- 特徴: 一般的な電気配線に使用される。
- 屋外用電線
- 特徴:耐候性があり、屋外での使用に適している。
- 地中埋設用電線
- 特徴: 地中に埋設することができる耐圧性がある。
- 屋内用電線
- 電圧による使い分け
- 低圧用電線
- 特徴: 家庭やオフィスの電気配線に使用される。
- 高圧用電線
- 特徴:電力送電線や変電所などで使用される。
- 低圧用電線
- 特殊用途による使い分け
- 防火電線
- 特徴: 高い耐火性を持ち、火災時の安全性を向上させます。
- 防水電線
- 特徴:雨や水に強く、屋外環境での使用に適している。
- 防火電線
電線を使い分ける際には、上記のどれかに該当することがほとんどです。
電線を選定する際には、具体的な用途や使用環境に合わせて、どの電線が適しているか検討することが重要です。
まとめ
以上、今回は電線の種類と使い分け方法に関する解説でした。
電線を扱う機会があれば、是非参考にしてみてください。
また、電線を扱う際は絶縁抵抗値の状態を把握することも重要です。
以下の記事では、電線の絶縁抵抗測定の手順や絶縁抵抗低下により発生する不具合について解説していますので読んでみてください。
この記事を読むと、電線の種類や特徴、使い分ける理由などについて理解できます。