電気設備には受変電設備やキュービクルと呼ばれるものがあります。
「受変電設備とキュービクルって結局同じものなの?」と疑問に思うことはありませんか?
受変電設備=キュービクルというイメージが強いですが、キュービクルの使用状況によっては同じとならない場合もあります。
今回の記事では、受変電設備とキュービクルの違いについて解説をしていきます。
目次
受変電設備とは
受変電設備とキュービクルの違いを知るためには、それぞれの設備について理解を深める必要があります。
受変電設備とは、電気を受電して実際に使用する電圧まで変電する設備のことを指します。
イメージとしては、工場や商業施設などの電気を受電して、自分達(工場等)が使いやすいように電気を変電している設備です。
ちなみに変電所とは意味合いが違いますので注意が必要です。
電気系法令の王道である電気設備技術基準という法令では変電所というのは以下のように定められています。
「変電所とは構外から伝送される電気を構内に施設した変圧器、電動発電機、回転変流器、整流器、その他の機械器具により変成するところであって、変成した電気をさらに構外に伝送するものをいう」
引用元:電気設備技術基準
つまり、変電所は「受電→変電→構外へ伝送」するものであり、受変電設備は「受電→変電→自所で電気を使う」というものになります。
これが受変電設備の概要です。
ちなみに変電所については、以下の記事で詳細を解説していますので、気になる方は参考にしてください。
受変電設備の構成について
受変電設備は「受電→変電→自分が電気を使う」という一連の流れを目的とした設備です。
様々な機器を組み合わせることで上記の流れを成立させています。
受変電設備の構成は以下のとおりです。
断路器
断路器は回路を開閉するための開閉器です。
断路器を開閉させることで電気を停止したり、受電したりすることが可能になります。
遮断器
断路器と同じく回路を開閉する開閉器です。
遮断器の場合は断路器と違い、事故電流を遮断することを目的としています。
電気回路に事故電流が発生した場合、事故が波及しないように、回路を開閉するものです。
断路器には事故電流を開閉する能力がないため、遮断器を設置する必要があります。
事故電流を開閉する際、開閉部にアークと呼ばれるビリビリと放電した電気が発生するのですが、このアークを消弧(消す)する機能は遮断器にしか付いていません。
変圧器、変流器
変圧器は電気を変電するものです。
受電した電気は高圧の電気であることから、そのままでは使用できず、自分達の使用する電圧(100Vや200V)に変圧する必要があります。
変流器は電流を計測するためや事故を検出するために使用しています。
変圧器も変流器も構造はただの巻線(コイル)です。
どちらも電磁誘導と呼ばれる現象を利用したものです。
以下の記事では電磁誘導について詳細を解説していますので、気になる方は参考にしてください。
保護継電器
電気回路に事故電流が発生した場合、放置してしまうと電線が溶断したり、設備が破損してしまいます。
保護継電器は変流器から事故電流を検知すると遮断器に回路を開くように信号(電圧出力)を出力します。
変流器は電流を計測、遮断器は事故電流を遮断しかできないことから、保護継電器を設置する必要があります。
キュービクルとは
キュービルとは、電気設備を全て函の中に収めるように設計された設備です。
キュービクルでは、先程説明した受変電設備を構成している断路器や変圧器、保護継電器なども全て函の中に収めることができます。
上の画像のように金属製の函の中に機器などを収めているイメージです。
以上のことからキュービクルとは、機器を収めている函のことを意味します。
キュービクルのメリット
キュービクルには、もちろんメリットとデメリットがあります。
実際に設備を設計する際は、電線や機器を屋外に設置する一般的なタイプにするか、キュービクルタイプにして全て函に収めてしまうかの2択になります。
それぞれのメリットとデメリットを考慮した上で、どちらを採用するか決定しています。
キュービクルのメリットは以下のとおりです。
充電箇所が露出しない
屋外に野ざらしにする一般的なタイプであれば、電線など電気が通電している箇所も野ざらしのため危険です。
しかし、キュービクルタイプで設備を構成すると、電線なども全て函の中に入ってしまうため、人が触って感電することがなくなります。
また、函の中に入っているため、雨風など天候の影響も受けず、地絡や短絡といった事故が発生する可能性が低くなります。
コンパクトに設置できる
キュービクルは全ての機器が函の中に収まっているため、一般的な野ざらしタイプよりも設置に必要な面積が少なく済みます。
そのため、狭い場所にどうしても機器を設置したい場合はよく活躍します。
以上が、キュービクルの主なメリットです。
メリットが少ないようにも感じますが、上記2つのメリットから得られる恩恵はとても大きいです。
特に感電するリスクが減る、電気事故の発生頻度が減るのはとても重要です。
感電のメカニズムについては、以下の記事で解説していますので、気になる方は参考にしてください。
キュービクルのデメリット
優秀なキュービクルですが、さすがにメリットだけではありません。
当然デメリットも存在します。キュービクルのデメリットは以下のとおりです。
機器の状態がわかりにくい
函の中に機器が入っているため、状態を確認しにくいです。
外観だけみるとただの大きな函のため、回路の接続状態は図面を見ながらイメージしなければなりません。
点検や掃除がしにくい
設備の点検をする場合、函の中にあるため点検しにくくなってしまいます。
また、接地をとりたい場合や点検で試験器を繋ぎたい場合もどこに接続すればよいのか、考える必要があります。
接地を付ける理由や仕組みについては以下の記事で解説しています。
コストがかかる
設備を函の中に収める分、初期費用がどうしてもかかってしまいます。
大きなコストをかけてでもキュービクルタイプにする必要があるのか、検討が必要です。
以上がキュービクルのデメリットです。
点検や掃除がしにくいという点については確かにデメリットですが、機器が函に入っている構造上、機器の状態が酷くなることは実際は少ないです。
初期費用をどうやって抑えるかがポイントになるかと思います。
受変電設備とキュービクルの違いとは
受変電設備はあくまでも、受電するために構成された機器類のことを指します。
変圧器であったり、断路器であったり受変電設備を構成する機器です。
一方、キュービクルというのは、簡単に説明すると機器を中に収めるための大きな函です。
受変電設備とキュービクルには上記のような明確な違いがありますが、キュービクルの中に受変電設備がある場合、キュービクルも受変電設備として扱われます。
受変電設備は、よくキュービクルの中に入っていることが多いため、受変電設備=キュービクルというイメージで認識されがちです。
しかし、キュービクルはあくまでも函です。中が空の場合は、受変電設備には該当しなくなります。
そのため、キュービクルは受変電設備になる場合や該当しない場合もありますので、注意が必要です。
まとめ
・受変電設備:受電した電気を使用するために構成された機器類
・キュービクル:機器を函の中に収めるようにした設備
・キュービクルの中に受変電設備がある場合はキュービクルも受変電設備になる。
以上、今回は受変電設備とキュービクルについての解説でした。
受変電設備はキュービクルの中にあることがとても多いです。
両方とも同じものというイメージが強いですが、キュービクルの使用状況によっては違う場合もありますので注意が必要です。
また、キュービクルに機器を収めることによって電気事故のリスクを下げることができます。
以下の記事では電気事故の地絡や短絡について解説していますので、気になる方はあわせて是非、読んでみてください。
この記事を読むと、受変電設備とキュービクルの違いについて理解できます。